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私はなぜ逮捕され、そこで何を見たか。

私はなぜ逮捕され、そこで何を見たか。
島村英紀 著 講談社

私が北海道に住んでいたころこの事件は発生した.元北海道大学教授が北海道大学から告訴されたということで北海道ではかなり話題となっていた.当初は「業務上横領」という話だったが,その後,私自身は事件を追っかけていたわけでもなく,記憶のかなたに事件は忘れ去られていた.ふとしたきっかけで,島村氏のWebsiteを見ると,裁判は終わり,「詐欺,執行猶予付き有罪」になったとあった.はて?業務上横領ではなかったのかな?Websiteを詳しく見てみると裁判の詳細が書いてあり,控訴を断念するにいたった経緯も読ませていただいた.なんとも不思議な裁判であったようだ.同Website上にこの「私はなぜ逮捕され、そこで何を見たか。」という本を出版したことが記載されてあり,手にとってことの詳細を見てみようという気がむくりと湧いてきた.

この本には裁判の詳細は記載されておらず,もっぱら拘置所とはどのようなところか?ということを,旺盛な好奇心,細かな観察,正確な記述からなり,勾留生活の詳細を科学者でなければ書けないような視点で綴った作品である.なにより,どんなことでもポジティブにとらえている部分は人間として,科学者として芯の強さが感じ取れ,清々しささえ覚える.「地球は自白してくれず,状況証拠から推測するしかない」(本文より)のだからコツコツと,めげずに進んでいくしかない地球物理学者の特性の一端を垣間見た感じがする.

直接島村氏の授業を受けことのある知り合いに聞いたところだと学生には結構人気があった先生らしい.歯に衣着せぬ物言いは学生には非常に受けるであろが,快く思わない人も多かったことであったろう.「政府の地震予知計画を厳しく非難してきたしっぺ返し」(本文より)の判決であったのなら非常に残念だが,島村氏ならではののポジティブな発想でこれからもご活躍なさることであろう.


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